この5月、従軍慰安婦をテーマにした韓国の絵本『花ばぁば』が

日本語訳で発売されました。(クォン・ユンドク 著 桑畑優香 翻訳 税抜き1,800円)

 

不思議な絵柄です。
全編を彩る美しい花も少女たちも何もかも、
すべての輪郭線を涙の跡が滲んで覆っているようなのです。

 

優しい少女の心や身体が傷つけられ壊されたことが、
美しい花々と柔らかな滲む線で表現されることによって
平和への祈りへと昇華されているのでしょうか。

花ばぁば1

『花ばぁば』の体と心が死んでいったと描写された見開きページ

 

新聞やイベント、ドキュメンタリー映画などの紹介によれば、
作者は広く人々の心に届けられるために

悲惨な出来事を写実的にならないよう、
美しく描くことに心を砕いたことがわかります。

 

なるほど、子どものケンカのような直截的な表現ではなく、
人権を侵害された少女たちの心を美しい花などの表現に託したことによって
一度しかない人生を謳歌する権利さえ奪ったと

静かに力強く訴えることに成功しているようです。

花ばぁば2

儚くも美しく力強い絵

この本は、韓国の著名な絵本作家であるクォン・ユンドクさんが
シム・ダリョンさんの証言をまとめて2010年に出版。

私も敬愛する田島征三さんや浜田桂子さんら日本の絵本作家による声がけで、
2007年に始まった「日・中・韓平和絵本シリーズ」のうちの1冊でもあります。
3カ国の絵本作家11人が平和をテーマに11作品を作り、
この『花ばぁば』以外の10作品はすでに日本国内で販売されているそうです。

 

 

出版に至るまでは下記に紹介する出版元のリンク先でもわかるように、

紆余曲折を経ています。
そうしてクラウドファンディングという時代の切り札ともいえる手法で、
どうしても高価になりがちな絵本の出版にこぎつけました。

 

 

作者クォン・ユンドクさんの言葉にあるように

「論争になるような証言の些細な点よりも、彼女が経験した痛みに対して、

より誠実に寄り添うべき」であると私も思います。

 

戦争は終わったもの・他山の石と考えるべきではなく、

いまこのときいつでもどこでも起こりうる危険性をはらんでおり、

従軍慰安婦のような人権侵害を過去のものとして省みることなく、

ひとり平和でいられるような時代ではありません。

 

もしも自分が、姉妹が、恋人が、友達が同じような目に遭ったならばと想像力を働かしてほしい。

『花ばぁば』が広く多くの人たちに読んでもらえることを願ってやみません。

 

【『花ばぁば』の入手方法】

この本は、なかなか街中の書店では買えません。
残念ながら一般的な流通では出回ってないようなので、
ネット通販で入手するのが確実で早いです。

この本の出版元である、ころから株式会社の
『花ばぁば』ページをご覧ください。
http://korocolor.com/book/hanabaaba.html

amazonや紀伊國屋書店など
書籍を扱う代表的なネット通販から入手できます。

一般的な「本を買う」ことさえもできない異常な状況や、
制作者たちの10年に及ぶ奮闘がリンク先で読めます。

花ばぁば表紙

『花ばぁば』表紙