「旧日本軍による強制連行」であり「従軍慰安婦は国策」と報じた朝日新聞と元朝日新聞記者の植村隆氏が、「捏造記事」を書いたとして激しいバッシングに晒され続けていることをご存知ですか。
映画『標的』は、植村氏が汚名を注ぐべく闘い続けた姿を追ったドキュメンタリーです。
この映画が、2022年8月27日(土)、北九州市生涯学習総合センターで上映されました。
非常に中身の濃い90分間の上映後、西嶋真司監督が40分近く講演し、合わせて質疑応答も行われました。
この映画の本質が何かということは、奇しくも映画の中で韓国の石碑に刻まれた言葉に象徴されると思います。
「記録に残らない歴史は繰り返される」
つまり、「”捏造”という言葉を使って、権力による”捏造に陥れられた一個人の闘い”をフィルムに残す」
これに尽きると思います。
彼の家族も危険にさらされて、映画の最初はモザイクがかけられていましたが、最後はモザイクはなく、彼の子どもも生きている限り闘っていくという強い意志に溢れていました。
なぜ、彼ひとりが陥れられなければならなかったのか。
どのような経緯で「標的」とされたのか。
突然、自分の言説を棚上げにしてバッシングを始めた櫻井よしこ氏の言動を検証していく過程で浮かび上がってきた「歴史修正主義」の巨大な思惑。
元RKB毎日放送のディレクターとして活躍していた西嶋監督は、徐々に「慰安婦」問題を題材に番組を作ることが厳しくなったと悟ったとき、安定したサラリーマン生活に終止符を打ちました。
そうして植村氏の闘いを追いかけていた映像や仕事そのものが全部無駄になることなく、あまねく世の中に伝えたいと、国家権力によってジャーナリストの魂をねじ伏せられようとした西嶋監督は映画を完成させたのでした。
昨年、映画は一般公開されましたが、草の根運動のように志ある人たちによって翌22年夏の現在も各地で上映されています。
先月、応援演説中の元首相が公衆の面前で殺され、計らずも旧統一教会と自民党との根深い闇が次々と暴露されています。
”標的”になった「慰安婦」問題を長年追いかけていた元NHKディレクターの池田恵理子さんらが証言するように、1997年の安倍政権下から始まった「教育制度から変えて、国にとって不都合な真実は隠し修正していく」政権の歪んだ正義。
相対して、この映画『標的』と同じように、権力によって悪意のない個人が”標的”の対象にされ監視される恐怖との闘いが誰にでも起こりうること。
それでもなお、闘い続けることの大切さと勇気をもらった一日でした。
ぜひ、多くのひとに観てもらいたい映画です。
【映画『標的』公式サイト】
https://target2021.jimdofree.com/