10月21日(火)、市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」(以降、「刻む会」)が行った政府交渉と記者会見を見てきました。
当日は、奇しくも高市早苗首相が誕生するという歴史的な日でもありました。

その2ヶ月前、宇部の沖合で83年も水底に眠っていたご遺骨が引き揚げられて2回目の記者会見で、何が語られたのか。

すでにメディア各社が報じており、当サイトの「newseye」でもまとめています。

ここでは、途中からの参加でしたが、その会場で見聞きした感想を覚書として残しておきます。

まず、刻む会による21日の政府交渉はご遺骨が発見されてから2回目であり、その後のメディア対応として14:30からの記者会見が予定されていました。

ご遺骨発見後、宙ぶらりんになっているDNA鑑定をどのように手配するのか。

韓国人犠牲者のご遺骨返還は日韓両国政府による協力あってのことですから、一歩ずつ歩を進めていた刻む会は警察庁、外務省、厚労省による回答を心待ちにしていました。

ところが。

私が到着したのは、ちょうど厚労省担当者によるDNA鑑定に関する回答中でした。
ニュースでは詳しいことは報じられていないようですが、端的にいえば、9月会見後から3省庁間で何も進んでいませんでした。

このことに刻む会の方々や長年応援してきた国会議員らが怒るのは無理のないことと思えました。

つまり、ご遺骨の発見前は海底作業は危険が伴うから十分な検査が必要だといい、発見後は放っておく。

民間主導でプロのダイバーに危険な海底探索をしてもらい、奇跡的にご遺骨を発見できたにも関わらず、ダンマリを決め込む。

確かに、この夏から当日まで政局が不安定で、官公庁は身動きが取れなかったかもしれません。
しかし、ご遺骨のDNA鑑定をどの方法で行うか、日韓でどのように協力して進めていくのかを”協議”するくらいは可能な時間があったはず。

その手配、道筋を立てることすら行ってないのですか?というのが、ここまで長年ご遺骨発見に取り組んできた刻む会の方々の意見でした。

のらりくらり言い訳をする政府側に対して、他の似たような案件と同様に「塩漬けするつもりですか?」と詰問するのは、至極当然のようにも見受けました。

もし、ご自分の家族・親族が同じような目に遭っていれば、同じ答弁で済ませられるのでしょうか。

12月19日までにと刻む会は日程を区切り、もし政府が対応しなければ、民間主導で早々にDNA鑑定を行うと宣言しました。

警察庁担当者は「民間がDNA鑑定を行うことはなんら法的に支障はない」とした上で、鑑定を実施すると記者の囲み取材に応えたようです。

ならば、政局が安定しようがしまいが、科学的捜査を粛々と行い、ご遺骨の行先を早く決めていただきたいと思わずにいられません。

下記は、3年前、当ブログで初めて長生炭鉱について書いた最後の一文です。

刻む会の不断の努力にはもちろん頭が下がりますし、やはり遺族の方々の無念には胸が塞がります。
とともに、倫理観を改めた日本政府の誠意ある謝罪を願い、事態が一歩でも前進することを祈っています。

さて、ご遺骨の一部がやっと日の目を見て、その御霊が「空気を吸えた!」と喜んでいる2025年秋。

日本政府はどのように舵を切っていくのでしょうか。
靖国に葬られている方々ばかりが英霊ではないと気づいて欲しいと切に願っています。

*10月21日の記者会見などについては、10月23日付newseyeをご一読ください。