この9月、ベルリンに設置された「平和の少女像」をめぐって日本政府が撤去を求めている事態を受けて、12月22日(火)、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動主催の現地とつないだオンライン集会に視聴参加しました。
まず、主催団体による告知文を引用します(原文まま)。
今年9月28日、ドイツで3つ目となる「平和の少女像」がベルリン・ミッテ区の公共の場に設置されました。
日本政府は直ちに撤去を要請し、平和の少女像は撤去の危機にさらされました。
これに立ち向かったのは設置責任者であるコリア協議会ハン・ジョンファ代表をはじめ、地域の人々でした。
少女像を守ろうとする人々の行動は、議会や各政党へと広がり、現在はミッテ区議会で「永久設置」に向けた決議も出されています。
日本からの執拗な圧力が続く中、ドイツ市民社会は過去の歴史と取り組んできた長年の経験や、現在も生起する紛争時や平時の性暴力に関する議論を踏まえて、少女像設置を支持しています。
全国行動はこの間ミッテ区長への要請文と合わせて日本政府に対する抗議文や声明を通じて広く日本社会にこの事実を伝えてきました。
今回はコリア協議会代表のハン・ジョンファさんを迎えて少女像設置の経過やこの間の状況についてお話をお聴きします。
また、ベルリン在住で日本軍「慰安婦」問題に取り組んでこられた梶村道子さんより現地市民の声を伝えていただきます。直接お話を聴ける貴重な機会です。多くの方のご参加をお持ちしています。
視聴の2時間は、あっという間でした。
ハン・ジョンファさんからは通訳を介してドイツ情勢の生々しい詳細を知り、梶村さんからは在独の日本人たちの在り方や考え方を興味深く聞けました。
そこで、備忘録的に書きつけておきます。(*印は梶村さんの見解)
- ドイツにおいて、「平和の少女像」設置に関する問題は今年始まったわけではなく、2016年まで遡ることができる。
- 以降、「戦時の女性への性暴力を象徴」する「普遍的な少女像の設置意図」を再三説いたにもかかわらず、日本政府による妨害工作が続いていた。
- 「20万人を慰安婦として連行したことは証明されてない」というのが日本政府の主張。
- 今年、ベルリン市のミッテ区に一旦設置された少女像が、日本政府の抗議によって撤去されることになった。
- そこで、リサーチ団体から始まり今や地域社会活動団体となったコリア協議会が少女像撤去の撤回抗議活動を開始。
- 375筆にも上った在ドイツ日本人の声明書(抗議書簡)も功を奏した。
- (*)日本政府とは異なる見解を持つ日本人は大勢おり、「慰安婦の性奴隷問題は、アジアだけの問題ではなく、今も後を絶たない問題として議論、掲示されるべきである」ということを抗議できた。
- しかし、11月末、日本の国会議員87名が抗議文をベルリンに送った。このことは、日本が”いまだに過去を反省してない歴史修正主義”であり、”表現の自由を理解してない”証左となった。
- これらコリア協議会や在独日本人らの抗議活動の甲斐もあり、12月1日、少女像の永久設置の決議案がミッテ区議会を通過した。年明けにも議会は再開し、永久設置の前向きな修正案の検討に入る予定。
- この11月から12月の間に日本政府がドイツに政治的圧力を加えたことによって、日本の歴史修正主義的な姿勢が暴露された。
- ドイツ地方自治体には中央集権的圧力に屈しない力があることも周知となった。
今回の抗議活動に参加した在独30年の梶村さんの見解は簡潔に4点に集約されました。
*ドイツには地域レベルで政治が根付いている。
*ドイツでは過去の犯罪は正すべき行動規範として譲れないものとされている。
*ドイツには加害者だった歴史認識(特に第2次大戦)がある。
*ドイツでは性暴力について充分に議論されてなかったことが今回の少女像問題で浮き彫りになり、女性への性暴力に反対できない政治家がいることもわかった。ゆえに、少女像は(歴史を反省するために)設置しなければならないと考える市民が増えた。
質疑応答も活発でした。おもな内容を要約すると下記の通りです。
Q1:ドイツで日本人はバッシングを受けないか?
A1:慰安婦像に賛成を支持する人はバッシングを受けている。しかしまた、慰安婦問題について視野が広がったことも事実であり、若者たちから署名も集まったことは率直にいって意外であり嬉しかった。(梶村さん談)
Q2:その後、少女像の碑文は修正されたのか?
A2:年明け後、「永久設置」についての議論が会議で始まる。
ミッテ区長からは「碑文にミスはない」と言われているため(コリア協議会が抗議した歴史認識に誤りはないとお墨付きを得たものとされる)、永久設置に必要な修正(単語やレイアウトなどの微調整)は行われる予定。(ハンさん談)
Q3:決議文を読むことはできるか?
A3:すでに報道されている。
少女像は「加害者は日本だけではない」という普遍的なメッセージを含んでいる。(ハンさん談)
Q4:ナミビアで性暴力が問題になっているが、コリア協議会は連帯する意思はあるか?
A4:ドイツが過去の歴史を振り返る時、ホロコーストがあくまでも中心。(ハンさん談)
ドイツでは植民地支配に関する意識は低いと思う。しかし、コリア協議会は共に努力(連帯)したいと思っている。
ドイツには民主主義が根付いている。日本で慰安婦問題の活動してきた人たちから学ぶことは多く、模範となる活動だと思うので、皆さんと連帯したい。(梶村さん談)
ドイツも今コロナ禍に喘いでいますが、その渦中にあってもこのような歴史認識に関する問題のために活動する人々が多数存在することに率直に驚きました。
冷静に現状を理解・打開しようとする、このような現地の声や情勢を知る機会があれば、また参加したいと思っています。