2020年11月3日、日本キリスト教会日本軍「慰安婦」問題と取り組む会の
オンライン講演会「女性国際戦犯法廷から20年」に参加しました。
クローズドの講演会だったので詳細は記せませんが、ここに概要と感想を残しておきます。
会ではwam「女たちの戦争と平和資料館」wamの館長・渡辺美奈さんが2時間ほど講演しました。
率直にいって、本当に胸に迫る講演会でした。
講演タイトルの「女性国際戦犯法廷」については、事前に準備されたwamのウェブサイトのアーカイブズを見るまで、不勉強な私はがいかなるものかをよくわかっていなかったので、尚更でした。
このブログを読まれた方には、法廷の目的などが記載された同ページをご覧になることをお勧めします。
wam 日本軍「慰安婦」アーカイブズ・女性国際戦犯法廷アーカイブズ
https://archives.wam-peace.org/wt/
wam館長である渡辺さんは長年にわたるwamの活動と今後の展望、2000年に開催された「日本軍性奴隷制の責任者を裁く女性国際戦犯法廷」の開催に至った経緯と判決などについて解説されました。
参照した上記サイトにも、その取り組みが書いてあります。
松井やよりさんというキーパーソンの存在と、その激闘があってこそのアーカイブズ、後を継ぐ大切さも。
「女性国際戦犯法廷」とは、いわゆる民衆法廷です。
民衆法廷とは「国際法上問題がある行為が発生していると考えるNGOや市民等が、自主的に有識者を集めて構成する模擬法廷である。」Wikipediaにあります。
法的効力がなく強制力もない模擬裁判に過ぎないという批判もあるけれども、独自の法廷憲章に基づき、被害者本人が証言して証拠資料が提出され、いずれの国家の政治的な思惑に左右されずに、世界的に著名な専門家が「慰安婦」制度の事実を認定し判決を出した、民衆による本物の裁判であるとされています。(注1)
2000年の「女性国際戦犯法廷」において判決が示したとおり、戦争中、日本政府や軍の関与なしに、広範囲にわたるアジア各地に慰安所を設置できるわけがないと断言できるゆえに、日本政府に責任があるのは明白だと私も思います。
このことは、先日逝去した元首相・中曽根康弘氏が回顧録に「海軍の主計将校時代、インドネシアで部下のために慰安書を作ってやった」と書いていたことが周知の事実であり、「女性国政戦犯法廷」に提出されたあらゆる資料と一致するそうです。
しかし、日本政府は何の罪のない女性たちを戦争下の国内外で性的暴行によって人間性を破壊し蹂躙したことを認めようとせず、今日まで謝罪すらしていません。
1993年、当時の河野洋平官房長官が発表した「日本政府は旧日本軍が慰安婦問題に関わっていたことを認め詫びる」とした河野談話を、2007年第1次安倍内閣が否定したことは記憶に新しいと思います。
残念ながら民主党に政権交代した時でさえも日本政府はその罪を認めようとせず、元号が変わった今も頑なに変わっていません。
私は、2時間にわたる講演中に数年前の大河ドラマのセリフを思い出していました。
「ならぬものはならぬ」
日本政府の不実は世間に広く知らしめなければならないと思いました。
前政権でも不正が横行したにも関わらず、誰も罰せられず、うやむやになったままです。
責任者を処罰しないのは日本政府の伝統なのでしょうか。
戦時性暴力を謝罪せず責任者も処罰せず、うやむやにしたままならば、またいつか轍を踏み歴史を繰り返すのでしょうか。
より問題な点は、戦時下のことであり、表向きはなかったことにしたかった時の為政者らによって証拠となる資料はとても少ないことだそうです。
よって、研究成果も上がらないのは仕方ないことかもしれません。
しかし、とても卑近な例ですが、私は「自分の家族や愛する人が慰安婦として連れ去られたら」と日本のみならず全世界の男性は考えないのだろうかとも思います。
自分(たち)だけは大丈夫、自分とは関係のないことだと思いたいのでしょうか。
私はこの講演会に参加して、より一層、明るい未来のために本当の歴史を正確に伝えられるようになりたいと思いました。
ところで、wamでは今年11月からの第17回特別展で「女性国際戦犯法廷」について開催するそうです。
今年は前代未聞のコロナ禍によって、これまで常識とされた生活様式がガラリと変わらざるを得ない年となりました。
近距離の旅行さえ憚られるようになるなんて、年初に誰が想像したでしょう。
来年は少しでもコロナの禍から逃れられ、wamの特別展を観たいと思います。
注1)「戦争と情勢への暴力」リサーチ・アクション・センター(VAWW RAC)の「女性国際戦犯法廷」について解説
http://vawwrac.org/war_crimes_tribunal/wct01_01_03